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君は誰
「ねぇ、空の色が変わる理由って知ってる?」
青いワンピースの青い髪と青い目の少女が少年に話しかける。
「知らない。」
「空ってね、光の屈折で色が変わるの。」
「へー」
「だからね、日光は昼はあまり空気の層に進行を邪魔されないんだけど、夕方になると空気の層をより多く通らなきゃ行けないから、拡散されやすい青は夕方には見えなくなっちゃうの。」
「…そう」
「君はどの空が好き?」
「俺は…曇ったグレーの空が好きかな。」
「君、ひねくれてるって言われない?」
「言われるけど、その発言はグレー好きに対する侮辱だぞ。」
「あー、ごめんごめん。」
少女は来い来いと手でジェスチャーする。
「お前は?」
「あたしはね、青い空が好き!
どの青い空も、日によって違っても、全ての青い空が好き。」
「そうか」
「ところで…お前誰?」
「あはっ、だーれだ。」
「知り合いか?」
「ぶっぶー」
少女は顔の前でばってんを作る。
立ち上がって、くるりと回りながら
「あたしはね、『青』だよ。
あらゆる青を知り尽くしてるの。
海の青も空の青も、なんなら合成着色料の青だって…」
「そうか」
「あー、そっけないんだー
ちぇっ、つまんないの。普通驚くでしょ?」
「驚かないよそのくらい。」
ぷくーっと頬を膨らませて、少女は少年の服に触れる。
ニヤッとして
「今から、あなたの服は青になりまーす。
えいっ」
「やっぱり口だけか?」
「…?そんなこと…」
「そう言えば、人の名前を聞いときながら、俺が名乗ってなかった。」
「ほんとだ!私から話しかけといてなんだけどさ、君は誰?」
「俺は…グレーだ。」
少女のワンピースが群青色に変わった。
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