2人が本棚に入れています
本棚に追加
海に続く道は、進むたびに磯の匂いが強くなる。東京よりも強い日差しは、肌に刺さってくるようでちょっぴり痛い。Tシャツが汗でじとりと濡れる。
それにしても、暑い。
暑すぎる。
時折、通り抜けてゆく潮風がすごく心地よくて、一瞬、吹かれるままに身を任せてしまった。そうしたら、おばあちゃんに貸してもらったばかりの麦わら帽子がひゅうっと飛んでいってしまった。
「あっ!」
「ん?」
目の前から歩いてきた男の子が、不思議そうにわたしの麦わら帽子を拾う。
「これ、きみの?」
首を傾げた彼は、失礼かもしれないけど、あまりにも海に似つかわしくない男の子だった。
日差しを跳ね返しているような白い肌に、色素の薄い茶色の髪と瞳。ネイビーのクレリック・シャツにベージュのパンツを身に着けている。のぞいている手足は、折れてしまいそうなぐらい細い。
「うん」
頷いたわたしに、彼は麦わら帽子を差し出しながら笑った。
「はい。もう、なくしちゃダメだよ」
まっすぐに向けられた笑顔がやけに眩しくて、素直にありがとうと言えなかった。「うん」とそっけなく返すので精一杯。
「これから、海に行くの?」
「そうだよ」
「そっか。それなら、海辺のかき氷屋さんがお勧めだよ」
「かき氷?」
「うん。特に、ブルーハワイ味が格別においしいんだ」
最初のコメントを投稿しよう!