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わたしは、イチゴを頼んだ。正直、ブルーハワイ以外なら何でもよかった。
彼は、やっぱり、ブルーハワイを頼んだ。
得体のしれない青いかき氷を前に、彼はぱあっと顔を輝かせた。
「いただきます!」
待ちきれない! といわんばかりに白いスプーンですくって、口に運ぶ。それから、日なたにさらされたアイスクリームのようにゆるんだ笑顔を浮かべた。
それがあまりに幸せそうなのがなんだか気に食わなくて、憎まれ口を叩いてしまった。
「そんなにおいしいの? ちょっと、大袈裟じゃない?」
「すっごく、おいしいよ。食べてみる?」
「やだよ。味の名前なのにブルーハワイなんて、ヘンだし」
「そこがいいのになぁ」
「……よくわかんない」
そっぽをむいてイチゴ味のかき氷を食べるわたしのことを、彼はにこにこと見つめながらブルーハワイを食べていた。
かき氷を食べ終わって、他愛もない話をした。少し経って、海の方で遊んでいかない? と声をかけようか迷っていたら、彼は「そろそろ、いくね」と立ち上がった。
びっくりして、去っていこうとする彼を引き留めてしまった。
「待って。名前、なんていうの?」
「渚。きみの名前は?」
「わたしは、香澄」
渚くんは、ふわりと笑った。
「かすみちゃん、今日はありがとう。僕は毎日ここに来てるんだ。また会えたら嬉しいな」
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