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あの広い部屋のなかがコンパクトになってこの新しいマンションに収まった。
高級マンションではない、ごく普通のマンション。
ここから二人で始めるのだ。
「こっちが渚の鍵だ」
「あ、はい」
新しい部屋の鍵。
二人の部屋の鍵だ。
なんだか、新婚生活を始める夫婦みたいな心境になる。
いや、やったことないからこんな心境なのかは知らないけど。
なんだかこそばゆいような、幸せを噛み締めるような。
暖かな気持ちだ。
「渚・・・」
「はい」
「俺についてきてくれてありがとう」
「・・・孝明さん」
鍵を手に座っていた俺の前に座り込むと、大きな手に包まれるように抱きしめられた。
孝明さんも、少し不安だったんだろうか。
すべて手放して一から始めること。不安がないわけがない。
自分の手で一からしたい。そうは言った孝明さんだけど、今まで手にしていたものを手放すこととには勇気がいっただろう。
それを、俺のためにって手放して、でも、前から自分でも思ってたんだって気にさせないように笑って。
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