☆幸福の朝

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 今日はハンバーグにした。さっき買ったミンチ肉を使って。孝明さんはそのハンバーグを一口食べ咀嚼しながら俺を見た。 「この部屋は狭い分、家事をする渚が近い気がする。それを眺めているのは好きだし、近くにいれば自然と手伝おうかと思うし、手伝うことで渚との会話も増えると気づいた」 「距離が近いって言うのは、すごくわかります。俺も、そう感じること多いし、それが嬉しいとも思います」  あのマンションはとても綺麗で高級だったけれど、広くて孝明さんとの距離も広かった気がする。眠る部屋も階すら違ったし、キッチンで料理をしているとき、孝明さんのいるリビングは遠くて話なんてできなかった。  ここでは、リビングとキッチンも近いし、ダイニングにいても言葉を交わすことは可能だ。だから自然と会話は増えるし、自然と孝明さんの足をダイニングからリビング、リビングからキッチンへと誘ってくれているのかもしれない。 「それと、気分的なものか? なんとなくこれまではしてもらって当たり前だと思っていた節がある。申し訳ないと今なら思うが。でも、今は一緒に一から初めてくれる渚を俺も支えたいと思ってる。渚が俺を支えてくれるように」 「孝明さん・・・」 「俺にできることは少ない。買ったものを片付けるか、皿を運ぶか。もっと色々したいのだが・・・。皿洗いなら、練習してみようと思ってる」 「孝明さんがですか?」
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