☆幸福の朝

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 驚きだ。皿洗いなんてきっとしたことなんてないだろう。  料理なんてしていなかっただろうし、人に触られるのがいやだと掃除は辛うじて自分でやっていたようだけど。  それなのに、自分からやってみようなんて。 「ああ。だから教えてくれ」 「はい。もちろん、喜んで」  歩み寄ってくれようとしているのだとわかる。  それが共に生活するということ。 「ハンバーグ、うまいな」 「ありがとうございます。ソースも手作りなんですよ」 「へぇ。渚が作るものはなんでもうまい」  嬉しくてたまらない。孝明さんがそうやって美味しそうに食べてくれるから。  俺は、なんと料理教室にまで通い始めた。少しでも美味しいものを、そしてレパートリーを増やしたくて。  主婦のなかに混じってやるのは少し恥ずかしいけど、そこで習ったものを家でつくって孝明さんが美味しいって笑ってくれるのが至福の時。
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