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「ここで雇ってあげたいけど、一人で十分回せるしな」 「いや、いいっす。そこまでしてもらう理由ないし。ここ、落ち着ける場所だから職場にするより休める場がいいです」 「そっか。ごめんな。でも、ここをそんな風に言ってもらえて嬉しいよ。俺はいつでも待ってるから、辛くなったらいつでもおいで。なにも頼まなくてもいいからさ」  真二さんは笑ってそう言う。  どこまでもお人好しなんだと思う。  こんないい人がいるんだな。  世界には、もっと悪どく残酷な人間ばかりなのだと思っていた。  そんな中に見つけた、光が真二さんだ。 「とりあえず、仕事探すよ」 「ああ。頑張って」  ちびちびと飲んでいたカクテルの最後の一口を流し込んで精算を済ませ店を出た。  バーカウンターだけのこじんまりとしたバー。  それでも席はちらほらと埋まり、繁盛しているのは真二さんの人柄のためだろう。  人生相談みたいなのを受けているのを度々見かける。  真二さんはいつだって真剣に聞き入り、適度な熱量で最善の答えを出している。  だから終わったあとは、皆決まってスッキリしたような表情を浮かべている。きっと問題が解決したわけではないのに。  心のモヤを、話して聞いてもらうことで払拭できているんだろう。
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