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それは、俺自身もそうだった。
初めて真二さんに出会ったとき、腹を空かせてふらふらだった俺をなにも言わずバーにつれてきて金もとらずご飯を与えてくれた。
明るく俺を受け入れて、深く聞き出そうともせず世間話で和ませてくれた。
そんな中で、俺が少しだけポロっと身の上を吐露すると、それまでの明るく軽い空気を一瞬で親身なものに変え、適度に相槌を打ちながらも必要以上に話を遮らず聞くに徹してくれた。
そのせいで俺は、それまで誰にも話したことがなかったトラウマの話を全てではないにせよ初めて人に話すことになった。
でも、それでもそのあと真二さんは俺に同情を見せるでもなく、それまでと同じように接してくれたのだ。
それに深く安堵したのを覚えている。同情されたくて話した訳じゃなかった。
むしろされたくないから、誰にも話したことはなかった。
同情だけじゃない。軽蔑や好奇の目で見られることも怖かった。
そんな不安を真二さんはいとも簡単に払拭してくれた。
だから俺は、そのあとも何度も足を運び今では常連と呼べるまでになった。
正直金はない。でも、一週間に一度、たったの一杯だけ。その時間が俺にはとても大切なものだった。
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