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「常盤?」
夜の街を歩く。バーを出てしばらくは飲み屋街で賑わっていて夜でも明るい。
だから、こうして知人に会ってもすぐに誰かわかるし、わかってしまえば逃げられないのだ。
「矢野・・・」
「お前、元気だったのか?」
矢野良太。俺の高校の同級生。数少ない友達だった。
そう。だった。
高校を卒業して、俺は彼と連絡をたった。一方的に。
「・・・まぁ、それなりに」
「それなりにじゃねぇよ。お前、卒業してから連絡つかないし。スマホ変えただろ」
「あ・・・、ごめん。変えてから誰にも変更の連絡するの忘れてて」
忘れてたなんて嘘だ。わざと送らなかった。
関係を切りたかったから。
「あの事、まだ気にしてんのか?」
「なにが」
「俺がお前を庇って事故ったことだよ」
誤魔化そうとしたけれど、誤魔化されてはくれなくて。
まぁ、矢野が切り出したことだし誤魔化されるわけはないのだけど。
顔に張り付けていた笑顔をフッと消した。
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