1.フられた直後に美少年の彼氏ができた話

3/5
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 背後で笑みを含んだ声が聞こえた。見れば、男子生徒が立っている。  夕陽を浴びてきらめく髪はさらさらで、肌は透き通るように白い。瞳は大きく、雰囲気は儚げだ。目元の涙黒子だけがやけに色っぽい。  少女と見紛うような容姿のそのひとは、微笑みながら歩み寄ってくる。 「初めまして。二年八組の神田志貴です」 「はあ。……な、何の用ですか?」 「そうだなぁ……単刀直入に言うと、」  かなり距離を詰めてから、神田志貴くんとやらは足を止めた。反射的に後ずさろうとすると、手を取られる。 「僕と付き合ってほしいな、って」  今、何と? 「……何の冗談ですか?」 「本気だよ?君が高校に入ってから五人目の彼氏と別れたら、告白しようと決めていたんだ」  穏やかに微笑んでいるが、ちょっと待て。 「どこから突っ込んだらいいのか判断に困るんだけど、取りあえず、何で知ってるの?さっきの見てたの?ていうか、初対面だよね?何をいきなり……」 「初対面だけど、君のことならだいたい知ってるよ?桐山月乃さん」  フルネームで呼ばれ、目を見開く。  おかしい。こんな天然モノの美少年、一度会ったら忘れないだろうに、全く見覚えがない。 「証明しようか?えっとまず、君は六月三日生まれのB型で、二年二組で席は窓際の最後尾、趣味は音楽鑑賞、得意科目は……」 「ちょっ、ちょっと待って!何で知ってるの!?」  神田くんがスッと目を細める。そして、唇を甘くほころばせた。 「君を愛しているから」 「あ、愛?」  大仰な単語に、ときめきを通り越して目が点になった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!