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背後で笑みを含んだ声が聞こえた。見れば、男子生徒が立っている。
夕陽を浴びてきらめく髪はさらさらで、肌は透き通るように白い。瞳は大きく、雰囲気は儚げだ。目元の涙黒子だけがやけに色っぽい。
少女と見紛うような容姿のそのひとは、微笑みながら歩み寄ってくる。
「初めまして。二年八組の神田志貴です」
「はあ。……な、何の用ですか?」
「そうだなぁ……単刀直入に言うと、」
かなり距離を詰めてから、神田志貴くんとやらは足を止めた。反射的に後ずさろうとすると、手を取られる。
「僕と付き合ってほしいな、って」
今、何と?
「……何の冗談ですか?」
「本気だよ?君が高校に入ってから五人目の彼氏と別れたら、告白しようと決めていたんだ」
穏やかに微笑んでいるが、ちょっと待て。
「どこから突っ込んだらいいのか判断に困るんだけど、取りあえず、何で知ってるの?さっきの見てたの?ていうか、初対面だよね?何をいきなり……」
「初対面だけど、君のことならだいたい知ってるよ?桐山月乃さん」
フルネームで呼ばれ、目を見開く。
おかしい。こんな天然モノの美少年、一度会ったら忘れないだろうに、全く見覚えがない。
「証明しようか?えっとまず、君は六月三日生まれのB型で、二年二組で席は窓際の最後尾、趣味は音楽鑑賞、得意科目は……」
「ちょっ、ちょっと待って!何で知ってるの!?」
神田くんがスッと目を細める。そして、唇を甘くほころばせた。
「君を愛しているから」
「あ、愛?」
大仰な単語に、ときめきを通り越して目が点になった。
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