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「夢みたいだ。……もしかして本当に夢?だったらもう覚めなくていいや、覚める前に死のう」
「夢じゃない!夢じゃないから!何で神田くんはそんなに大袈裟なの……」
「志貴でいいよ」
そして、結構話を聞かない。これは先が思いやられる。
「じゃあ、私も月乃でいい」
「よろしくね。……月乃」
噛み締めるように、とろけた瞳で、志貴が私の名前を囁く。愛おしそうに。
きゅうっと胸が締めつけられて、鼓動が速くなる。何だろう、これ。胸元を思わず手でおさえて、息を吐く。
「どうしたの?」
「何でもない。バイト行かなきゃだから、またね」
「あれ?シフトの時間もっと遅いよね?」
「何で知ってるの……。今日は変更があっただけ。じゃあね」
言い捨て、返事も待たずに走り出す。……シフト変更なんてしてない。嘘だ。
ただ、胸の中がざわざわして、あの場にいられなかった。志貴と相性がよくないのだろうか。
「……死なれたら困るし。うん、そうだよ。きっとそれだけ」
ひとりごとは、やけに言い訳くさくなってしまった。
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