2.彼氏(仮)に翻弄される話

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「わっ……すごい」  お昼休み。志貴につれられ、屋上の端っこに座り込み、弁当箱の蓋を開ける。途端、ご馳走が目の前に現れた。 「志貴が作ったの?本当に?」 「うん。月乃の好物を入れたつもりだよ」 「……いただきます」  まず、卵焼きをぱくり。ふわふわ食感の関西風の出汁巻だ。おにぎりを齧ると好物の鮭が姿を見せ、唐揚げは醤油のきいた私好みの味付け。  恐ろしいことに、私の嗜好を網羅しているとしか思えない完璧な献立だった。  怖いなぁと思いつつ、箸が止まらない。  おかずの半分程が私の胃の中に消えたところで、何気なく志貴を見ると、目があった。  とろけるような甘い目。自分はろくにお弁当に手をつけず、幸せそうに口元を緩めている。 「……食べないの?」 「食べてるよ。でも、月乃を見ている方が楽しい」  笑って、箸を持っていない方の手を取ってくる。するりと私の指の間に志貴の指が入り込んできて、きゅっと握られる。  意外というか何というか、中性的な容姿の志貴だが、手はちゃんと男だ。私より大きくて、骨っぽい。 「好きだよ、月乃」  ドキンと心臓が跳ねた。
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