9人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「わっ……すごい」
お昼休み。志貴につれられ、屋上の端っこに座り込み、弁当箱の蓋を開ける。途端、ご馳走が目の前に現れた。
「志貴が作ったの?本当に?」
「うん。月乃の好物を入れたつもりだよ」
「……いただきます」
まず、卵焼きをぱくり。ふわふわ食感の関西風の出汁巻だ。おにぎりを齧ると好物の鮭が姿を見せ、唐揚げは醤油のきいた私好みの味付け。
恐ろしいことに、私の嗜好を網羅しているとしか思えない完璧な献立だった。
怖いなぁと思いつつ、箸が止まらない。
おかずの半分程が私の胃の中に消えたところで、何気なく志貴を見ると、目があった。
とろけるような甘い目。自分はろくにお弁当に手をつけず、幸せそうに口元を緩めている。
「……食べないの?」
「食べてるよ。でも、月乃を見ている方が楽しい」
笑って、箸を持っていない方の手を取ってくる。するりと私の指の間に志貴の指が入り込んできて、きゅっと握られる。
意外というか何というか、中性的な容姿の志貴だが、手はちゃんと男だ。私より大きくて、骨っぽい。
「好きだよ、月乃」
ドキンと心臓が跳ねた。
最初のコメントを投稿しよう!