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まにまにの出来事
塀二の姉、噤が現れた騒動から数日、塀二は自室でコソコソと電話をかけていた。
「なんかアイツ最近おかしいんですよね。大体はいつも通りなんだけど、時々ボーっとして、たまにひとりでひっそり泣いてたりするんですよ。声をかけたら『なんでもない』って言い張るから慰めることもできなくて。やっぱり引きずってるんじゃないかなと。家は元通りになってますけど、ふたり死んだ家で暮らすのはキツいのかなって心配なんです」
幼馴染で同居人の框はあれ以来も変わらず塀二とひとつ屋根の下で暮らしてはいるが、今まで通りとはいっていない。
框が〝死〟を目にするのは初めてではないと言っても、今回ばかりは相手と状況が特別だった。わざと心を抉るよう仕向けられたのだから当然のことと言える。
扱いに困り切った塀二が頼った連絡相手は苛立った声で答えた。
『テメー、オレをなんだと思ってそんな相談をしやがる』
電話の相手は滝箕祢行護。塀二が所属(隷属)する組織に重用される男で、〝連射される最終兵器〟と呼ばれている。同居人の心のケアを気にして連絡を取るのは極まって不適切な人物ではある。
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