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輝は部屋を見渡した。この部屋にはテーブル、ソファーくらいしかない。恐らく正確に必要最低限の物しか置かないタイプなのだろう。五分程して姿を現した遥はブルーで薄手のスウェットを上に下はデニム、長い髪はポニーテールに結っていた。遥の普段着に輝はまじまじと見入ってしまったが、そこで気づいたのが腕に着いた痣と治りかけであろう切り傷だった。
「怪我、どうしたの?」
「あ?これ?これ、ちょっと」
「もしかして誰かに暴力振るわれたの?」
「あっ、いやそうと言うか違うと言うか・・・一方的ではないから」
「え?何?喧嘩?」
「え、ああ、まあほら、悪と戦っているとこうなる訳ですよ」
「ふっ、はぐらかすかー。まあ、いいや。分かった」
「まあ外傷は早めに治るのだけれど、内部の傷は少し時間がかかるんですよね。だからあの時、吐血しちゃったんですよね」
「あっ!分かった。格闘技でしょ?」
「あー、まあそんな感じですかね。まあ、それより何が食べたいですか?」遥はそう言うと、溜めてあった宅配のチラシを輝の前に広げた。ピザ、寿司、蕎麦、中華、ファミレスなど種類は豊富だ。
「時間、大丈夫なの?」
「そうですね、場合によってはすぐに出なきゃいけなくなるかもしれません」
「慌ただしいな。まあ、分かった。じゃあ、早く来そうなピザにしようか?」
「分かりました。じゃあ・・・」
三十分後、ピザが到着した。そして二人はピザを頬張りながら、今後について話し合った。
「実際、青木さんはどうするんですか?まだ決めていないって話していましたけど」
「君とずっといたいよ」
「いきなりですね。同じ会社に入るって事ではないですよね?」
「それも悪くないよ。その調子じゃ、新天地でも同じ問題に遭遇しそうじゃないか」
「確かに。まあ、それでも良いですよ。残業をあまり強いられない会社なら」
「プライベート重視か。なあ青峰さん、俺とアメリカとかどうかな?」
「え?アメリカですか?頭に無かった訳ではないですが、まさか青木さんの口から出るとは思いませんでした」
「アメリカなら、君の容姿でとやかく言わないだろう」
「ふふ、行っちゃいますか、アメリカ?」
「行こう。でも、アメリカでも君の続けたい事は続けられるのかな?」
「ええ、続けられますよ」
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