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遥のその一言に輝は時計に目をやった。時計の針は丁度、一時間後を指していた。輝はこのままブルームーンで夕食を済ますと言って遥を見送ると、どうやって遥の噂を無くすかをずっと考えた。また、遥が毎日頑なに誘いを断ってまでしている事についても知る必要性も視野に入れていた。遥のプライベート、それは確実に謎のベールに包まれている。
青峰遥が転属してきて四週目、輝は遥の悪い噂を無くすべく行動した。それは依然同様、一人一人に話をする事だった。以前とは違って、今度は普通に言葉を交わせる関係までにはなっているので、さり気なく懐に入りながら噂の出所を探った。まずは朝礼前に喫煙所で一年先輩の広田信に聞き込みを行い、広田は本間希から噂と聞いたと話したので、輝は本間の元へ。そして本間はその噂を人事係長の北村から聞いたと話した。そう、北村だ。
「北村係長、おはようございます」
「おお、おはよう。どうした?」
「あ、いや、青峰さんの噂について耳にしたのですが、何か知っていますか?」
「ああ、噂だろ?俺も聞いたよ」
「へー、誰に聞いたんですか?」
「誰?あれ、えーっと本間だったかな」
「本間さんは係長から聞いたって話していましたよ?」
「あー、そうだったかな。えーっと忘れちゃったな・・・」
「そうなんですね、可哀想ですよね、変な噂たてられちやって」
「そっ、そうだな」
話の出所は北村だ。輝は仕事後、再び遥を呼び止めた。相変わらず遥は忙しそうに足を止める事はしなかったが、今日の出来事を歩きながら聞くと、ピタッと足を止め、苦笑いをしながら再び歩き出した。
「逆恨みですね」
「どう言う事?」
「北村係長にはデートに誘われたんですけど、断ったんです。だから多分その腹いせです」
「何だそれ、あいつマジでクソ野郎だな」
「いるんですよ、そういう人」
「まさか今までもそんな経験が」
「まあ、慣れっこです」
「酷いな、俺が何とかする」
「なんかすみません。でもこういうの慣れているから、無理しないで下さい」
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