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 彼女の眉がピクりと動いた。彼女は、白井莉里ちゃんはわが高校の美術部に所属しており何度もコンクールで入賞している天才だった。そして今日のデートはそのモチーフ集めを兼ねて植物園に行くのだった。 「えーと、その、何部でしたっけ?」  彼女はやや後ろめたさを滲ませながら質問を続けた。他に他人を認識する術がないとはいえ失礼承知で他人を試すような真似をするのだ。彼女自身の心痛も推し量れるというものだ。 「えー、忘れちゃったのぉ。酷いなぁ莉里ちゃん。嘘だよ。帰宅部。莉里ちゃんみたいに何かに打ち込んでる奴ってすごいよね。俺なんていつもフラフラしてて、さ」  だから殊更に明るく朗らかに。こっちはそんなもの気にもしていないんだよ、と言外に告げる。折角のデートなのだ。つまらないことで沈まれたら台無しだ。 「そ、そんなことないと思いますよ」  もう大分警戒心が薄れたようで彼女が慌ててフォローをくれた。 「クラスのみんなもカッコいいって言ってますし。本当、むしろ私の方が釣り合わないっていうか。ねえ三ツ谷先輩」  おっと、最後の鎌かけだ。こういうのを即興でやってのけるのだから彼女は相当に頭の回転が速いのだろうな。そんなことを考えながら顔に微笑を作る。 「先輩って、同じ高二だよね?なんか俺が留年した、みたいな感じはやめておくれよ」  あくまでも冗談として処理してやった。 「あ」     
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