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(ん?遠慮?長男が次男に?)
明日香は、表情を変えないまま考えたのだが、夏樹さんは、簡単に説明してくれる。
「兄貴は親父の妾が産んだ子供なんだ。
僕の母は上流階級出身の正妻だから」
「ともかく、夏樹さん!
私はあなたのお目付役として婚活パーティーについてきただけ。
石井くんはたまたま私に会いに来ただけ。
石井くんだけは巻き込まないでいただきたい」
「えー。明日香ちゃん、綺麗なお洋服着てるのに婚活しないの?
僕の偽装恋人になって、一緒に兄貴を騙そうよ!」
「蒼樹副社長を騙すんですか?無理ですよ!」
「じゃあ僕が金持ちのお嬢様と本当に結婚して、社長になったらどうする?
困るでしょ?」
(確かに困ります)
明日香だけではなく、もう一つ、硬い声が……
「会社が潰れます」
きっぱりと言い切る霧島取締役。
「ヘタに婚活が成功して、良家の子女と結婚されても確かに迷惑です」
霧島取締役は真剣な顔で悩む。
「会社を乗っ取られる可能性が出ます」
「なら、決まり!偽装恋人として明日香ちゃんを紹介しよう!」
「おやめください、夏樹さん!」
「ふ~ん」
夏樹さんは、ズルい笑顔になった。
「僕は知ってるんだよ、取締役。
あなたが何をしようとして明日香ちゃんが本社勤務になったのか」
(え?)
「…それは」
「手を結ぼ!兄貴の本音を引き出すには、多少の犠牲は必要だよ」
「…そうですね。確かに手荒な方が良いかもしれません」
霧島取締役は明日香を見つめた。
「石井くん。やっぱり犠牲になりなさい」
「はい!?」
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