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「神ならー…世界を救ってくれないか」
「悪いがそれはできない」
男は笑顔のまま言い切ると、唖然とする女を立たせた。
「もうすぐ雨が降る。そこの木の下まで」
「……あなたは、神ではないのか」
腕を掴まれ引っ張られても、雨を凌ぐつもりがない女は歯を軋ませた。
「神さ。でも…ーーー いいや、なんでもない。行こうか」
男が言った通り、灰色の雪は黒い雨に変わる寸前たった。周りにいた人々はすでにいない。
女は諦め、男についていった。
「神ではないのなら、あなたは一体誰なのだ」
「神。その他の何にでもないさ」
「ではどのような神なのだ」
「強いて言うなら「誰かさん」のための神かな」
「…「誰かさん」?」
「誰だっていいだろう」
神は、大きな大木に寄りかかって座った。となりに、この男ではない神を信仰する女は佇み、もうすぐ滅びようとする無残なこの世界を見つめていた。
それはまるで自分を嘆き悲しむようなーーー絶望的な眼差しだった。一方、神は他人を見るような眼差しで灰色の世界を見据えている。
「なんで神に救いを求める?」
神はのん気に問う。
女は見ず知らずの神にこんなにも感情を漏らしてもいいのか、と疑問に抱きながらも答えた。
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