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2.「ここ掘れワンワン」させてもらえず
「そぉ言えば、浩太、緊急脱出してきたって、言ったよね。それと、お年寄りが気に食わないのと、なんか、関係あんの」
「よくぞ、聞いてくれた」浩太が、どんとテーブルをたたいた。
「俺、『花咲か爺さん』の犬役で、派遣されとって、そこで『花咲か爺い』にひっどい目に遭わされて、緊急脱出してきた」顔が犬のままだったところを見ると、よほど泡を食って、逃げかえってきたに違いない。
「ひどい目って、隣の家の意地悪爺さんに、想定外のひどいことをされたの?」
「違うよ。俺をとんでもない目に遭わせたのは、親切なジジイの方だ。俺は、親切なジジイの畑に宝物が埋まってるのを嗅ぎつけて、吠えて教えてやるはずだった。隣の意地悪ジジイがからんでくるのは、そのあとだ。今回は、意地悪ジジイが出てくるとこまで、行きついてない」
「えっ、なんで?」
「優しい・・・っていうか、優しいはずのジイさんは、俺が吠え出すまでは、確かに、昔話どおり、正直で、おだやかで、親切だった。ところが、俺が畑で吠え始めたとたんに、血相変えて俺をひっ捕まえて、口輪をはめやがった」
「どうして?」
「町内会の圧力に負けたんだ。俺がジイさんに拾われて、ジイさんの家に連れてかれる途中、町内会のチラシが大きな木に貼ってあるのを見た。『犬の吠え声はご近所の迷惑です。飼い主は、犬にムダ吠えさせないよう、厳重、注意願います』そう書いてあった」
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