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紫陽花色に染まる目元が、驚くように瞬きをした。
それから、くしゃりと顔を崩した後で、
「うん。恵ちゃんを選んでいたよ」
絵利は嘘のない言葉を口にした。
コンコン
部屋になり響いたノックの音に、僕らは同時に扉の方を見た。
「失礼します。そろそろ新郎さまも、お着替えに」
さっき出て行った女性が、柔らかな笑顔でそう告げた。
「わかりました。すぐに行きます」
「恵ちゃん!」
「ん?」
立ち上がった絵利が、その手をきゅっと握った。
「ありがとう」
「え、」
「恵ちゃんの気持ちが聞けて、嬉しかった」
「・・・俺も、話せてよかった」
見つめ合った後でまた、二人同時に笑みを零す。
照れたような、だけど幸せに満ちた笑顔。
「幸せになろうな、絵利」
「今も既に、幸せだよ」
彼女は今日、結婚する。
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