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だけど僕にはもう、君を幸せにする手は残っていないから。
今はただ、祝福の歌を歌おうか。
「はい、誓います」
産まれてから何度も聞いた彼女の声が、愛を紡ぐ瞬間。
僕もまた、どこかにある未来へと歩き出すことにした。
僕の役目は、ここまでだ。
6月の空は、梅雨であることを忘れたように晴れやかで、見上げれば一面、み空色に染まっている。
「では新婦である絵利さんがブーケを投げますので、女性ゲストの皆さんは大きく手を伸ばしてくださいねー!行きますよ~さん、にい、いちっ!!」
そう言えば、絵利はキャッチボールが下手だった。
いつかの記憶を思い出しながら、寄り添う二人を見下ろした直後、彼女の手を離れたブーケは風に乗るように大きく舞い上がり、僕の居る場所まで届きそうになった。
絵利はやっぱり、絵利のままだ。
あまりに豪快なブーケトスに、僕は吹き出して笑った。
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