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絵利のことを一番そばで見てきたのは僕だ。
そして森野の気持ちを、一番理解しているのも僕だ。
「今は、あいつがどうとか関係なく、絵利と幸せになりたいって思っているよ。この先もずっと、絵利を誰よりも愛しているのは俺だって、言えるだけの自信が出来た」
その言葉に、胡桃のように丸い彼女の瞳から、涙が零れた。
忘れたくないこと。忘れられない人。
だけど時間は確実に進み、人は少しずつ前へと進む。
生きている限り人は、止まることも戻ることも出来ない。
ただ前に進み続ける時間の中で、自分でも気づかぬうちに変化していく。
思い出の中に居るだけでは、叶えられないことがある。
「私は恵ちゃんのことを、代わりだなんて思ったこと、一度もないよ。確かに、夢はてっちゃんのお嫁さんになることだったけれど、今の私はあなたのお嫁さんになりたいと思っている。今でもてっちゃんが特別であることには変わりないけれど、私がこれから一緒に歩んでいきたいと思える人は、恵ちゃんしかいない。この世界も、宇宙の果てまでも探しても、私が好きなのは恵ちゃんだよ」
「・・・一度だけ、ずるいこと聞いてもいい?」
「なに?」
二人が歩いてきた道も、交わしてきた言葉も、重ねてきた想いも、誰よりも知っているから、わかることがある。
「もしもあいつが生きていても、俺を選んでくれた?」
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