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いくら人気のない山の中とはいえ、男同士で手を繋ぐなど、死んでも考えられない朔耶だった。
「バカじゃねぇの?お前」
相変わらずの毒舌を涼に投げつける。
しかし涼は気にせずこう言う。
「だって朔耶が失踪したら困るだろ」
その真面目に言ってるところが、朔耶のイライラをさらに募らせた。
バカバカしい――
朔耶はオカルト系の噂など信じていなかった。
この城で失踪者が相次ぐのは、失踪者本人の意志が働いていると考えていたからだ。
つまり、今までの行方不明者はこの城で失踪したのではなく、失踪の噂を知って、家出に使うのに利用した…ということだ。
事実、この城からは失踪者の遺体は当然、白骨さえただの一人も見つからなかったのだ。
噂など所詮そんなものだ、と朔耶は思っていた。
ところが次の瞬間、なぜか突然、朔耶は弾かれたように目前の城を振り仰いだ。
毒々しい鉄壁の城をその鋭い瞳で見上げる。
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