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黒く沈む無数の窓を睨むように見つめる朔耶に気づいた涼が、不思議そうに問う。
「どうした?」
声をかけられた朔耶はハッとして視線を戻す。
「なんでもない」
何となく誰かに見られているような、嫌な視線を感じた朔耶だった。
しかしすぐに気のせいだろうと自分に言い聞かす。
城の雰囲気や、バカげた噂に感化されたのかもしれないと自分を戒める。
涼の好奇心を早く満足させ、ここを去ろうと考えるのだった。
が、城の中に入った途端、朔耶はまたしても違和感を覚えてしまう。
微かに…
血の匂いを感じたからだ。
城のエントランスに立ち、しばらく動きを止めていた朔耶に、涼が近づく。
「朔耶~、あんまりボーッとしてると襲っちゃうよ」
朔耶の顔を覗き込み、またしてもセクハラ発言。
朔耶は間近に迫る涼を睨みつけた。
すると、
「その目、好きなんだな~」
と、笑いながら涼は言う。
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