298人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
「それ以上オレに触れたら――」
朔耶の瞳に何やら決意の色が宿る。
すると男はなぜか朔耶の身体から静かに手を離し、いきなり自分のネクタイを手早く外し始めた。
訝しそうに見つめる朔耶の目の前でそれをピンッと張ると、次の瞬間、朔耶の口にかませ首の後ろで縛り上げたのだった。
「…ゥ…ンッ…!!!」
「あなたのイイ声が聞けなくなるのは残念ですが、舌を噛み切って自害されたら困りますからね」
男の言葉に朔耶の眉がピクリと動く。
男はいとも簡単に朔耶の考えを見抜いたのだった。
男の余裕とは逆に、朔耶の瞳は憎悪を増していった。
それでも男はまるで煽るように朔耶に囁く。
「あなたが極上の快楽を得て、よがって啼く頃には、そのネクタイを外してあげますよ。その時はもう舌を噛み切る力も残ってないでしょうからね」
言って男はクスクスと笑う。
全ての抵抗を塞がれた朔耶は、この時初めて背筋に冷たいものが走ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!