それが青ならば

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 私は夏が嫌いだ。 薄着での運動を強いられる。 スポーツと前に言葉付くなら秋も嫌いだ。 春も少し苦手だ、薄着になるから肌の露出もやや増える。 「早く冬にならないかなあ」  真夏のカンカン照り中、エアコンの効いた部屋で吸血鬼、もとい吸血人間にゴチる。 「急に何? チナツなんて名前の癖して」 「だってほら、冬なら厚着も違和感ないし、なんなら怪我も減るし」 「でも、夏はともかくとして、春もいいもんだよ。じゃあ針、刺すよ」  彼は慣れた手付きで私の右の裏肘に注射針を差すと、小さな試験管一つ分の血を抜き取った。 「んんっ、何回やっても痛いのは痛いね。それ一本で済むのはいいけど」 「針を刺すのだけは毎回悪いと思ってる。今日も青だね」   彼、吸血人間のチハルと会ったのはこの前の春、入学式から少し経ってからのこと。 私は怪我をするとその時の気分によって赤色以外の血が出てしまうからいつでも怪我を気にして厚着、その上挙動不審だったし、チハルはたまに血を飲まなきゃ貧血で倒れちゃうしで、困った二人だった。 ただ、一番困っているのは、それを誰にも打ち明けられないことだったけれど。 「チハルはさあ、いつからなの、それ」     
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