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悪魔の涙が空に移ったように、いつもの青空は曇ってしまい、雨が降り始めました。
涙ではない、本物の雨です。
ざあざあと降る雨は、瞬く間に悪魔の体を冷たく叩きます。
青い悪魔は、『人間の目線に似てるな。』と少し思いました。
ぽちゃん、と海に頭を浸します。
海は悪魔の涙で出来ているのに、とても冷たいです。
頬にその冷たさを感じながら、少しだけ顔を歪めて、水中に眼を凝らします。
すると底の見えない深い青の暗闇に、主の大きな尾鰭が翻ったかのように見えました。
噂はほんとうだったのだな、と悪魔はその時知りました。
段々口にため込んだ酸素が減ってきて、苦しくなってきます。
水の中では耳はぼんやりとした音を拾うだけで、他に音はありません。
世界からなくなる時でさえ、独りぼっちなのかと悪魔は水中で笑いました。
『もういいや。独りぼっちで。』
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