俺のじいちゃん

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 じいちゃんが亡くなった。高齢だったし、大往生と言っても良かったんじゃないかな。じいちゃんはとにかく俺に優しかった。亡くなるのがわかっていたのか、よく連れていきたい場所があったらしく、それだけが心残りだったようだ。自分の所有している山に、それは美しい場所があるらしい。赤い沼だったそうだが、にわかには信じられなかった。赤い沼だと、プランクトンとかあまり印象が良くない。学生生活も間もなく終わりだし、どれじいちゃんの所有地の散策でも行きますか。  甘かった...じいちゃんの山登りは以外にキツかった...キノコとかもないから、忍び込むヤツもいないだろうけれど、こりゃ生き物もいなさそうだ。変なムシはいそうだけど。息を切らしながら、フラフラしていると、水溜まりに足をとられた。そこは沼というより、大きな水溜まりのような場所だった。誰も踏み入れていないせいか、手付かずの美しさがあった。水はエメラルド色に輝いていた。「じいちゃん、昔の事で色を勘違いしていたのかなあ」と、何処か自分に似てそそっかしかったじいちゃんに、思わず笑ってしまった。さあ、日も暮れるし、戻ろうか...  俺ははっと息をのんだ。夕陽を映した青い沼が、ルビーのような色に変わっていた。このレアな風景をじいちゃんは話したかったのだろうか。インスタ映えしそうだけど、撮影はやめた。この風景はじいちゃんと共有することにする。これからも...
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加