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幼なじみのアイツ
「翔太、雪乃ちゃんが来てるわよ。起きなさい」
休日の朝、俺は母さんの怒鳴り声で目を覚ました。
寝ぐせでぐちゃぐちゃの頭をかきかき、階段を降りると、雪乃がリビングのソファにちょこんと座っている。
「……翔太くん。……、おはよう」
蚊の鳴くような小さな声で雪乃が声をかけてきた。
今日も前髪が目をすっぽりと隠して表情をうかがうことが出来ない。雪乃の周りだけ空気がよどんでいる。朝から暗い。暗いぞ。そして、トレードマークの黒縁眼鏡。あんな長い前髪なのに、あのメガネはちゃんと機能を果たしているんだろうか。俺はよく不思議に思っている。
雪乃のぽってりとした唇の両端が持ち上がっているから、彼女の機嫌がいいことは幼なじみの俺には分かる。いや、それしか分からないんだけど。
俺は、おお、と、ああの中間の声を出して雪乃に応じると、洗面所に飛び込んだ。
雪乃の母さんと俺の母さんはあ小さい頃からの親友で、俺と雪乃も自動的に幼なじみの関係だ。付き合っているわけじゃない。
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