幼なじみのアイツ

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 今日も雪乃が観たがっていた映画を親子で行くはずが、急な仕事で雪乃の母さんが行けなくなったため、急きょ代打で俺が雪乃に付き合うはめになっただけで。ちなみに、雪乃の父さんは北海道へ単身赴任中だ。  重ねて言うが、俺たちは付き合っているわけじゃない。 で、映画館に着いた俺はチケット売り場の前でぞんざいにどれが観たいんだ、と壁に並んで掲げられたポスターを顎でしゃくってみせた。 雪乃の指がすっと持ち上がり、その中の一つを迷いなく差した、 う……。  よりにもよってホラーかよっ。  俺は血に弱い。 家庭科の授業でうっかり針を指先にぶっ刺して……実際はちょっと針で突いてしまっただけだったが……その後指先にプツリと血の球ができた時には動揺してクラクラと眩暈がしたくらいだ。  総じて男は血に弱いと俺は信じて疑わない。だって、俺がそうなんだから。  だから、なんか訳わからねえ、仮面をつけたおっさんがチェーンソウぶん回して切りつけてくるとか、ゾンビの手足がもげながら歩いてくるだとか、マジ勘弁してほしい。  だって、必ず血が出るじゃん。ドバーッって感じでさ。  思わす口元を引きつらせながら、雪乃の顔を見つめて、念のため、確認のため、間違いってこともあるからな、 「お前、この映画見たいの?」 って聞いたら、淀みなくコクリと頷かれた。     
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