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しかも、自分で思ったよりもでかい声で。俺は自分の声にびっくりして目をぱちくりとさせ、雪乃はその場に凍り付いた。そして、カウンターに座る、デパートの制服を着た綺麗なお姉さんがた二人が、同時に顔を見合わせた。なんだかお姉さんたちが、にやついているように見えるのは気のせいじゃなさそうだ。
お姉さんたちは、まぁ、と口元に手をあてて俺を見ると、うふふと微笑んだ。
俺はしどろもどろになりながら、お礼だけ言うと雪乃の腕をつかんで、急いでその場を離れた。
今頃、お姉さんたちは何と言っているだろうか。
中学生のカップルよ。可愛らしいし?わね、とかなんとか。
きっと言ってるぞ。
想像すると恥ずかしさで頬が熱くなってきた。
別に、俺たち付き合ってるわけじゃないんだから、誤解だ、誤解。
「……くん、翔太くん、腕が痛いよ」
雪乃の声で我に返った。
「ご、ごめん」
あわてて手を離す。見ると、雪乃の腕に俺の手のあとが、うっすらついていた。結構強く雪乃の腕をつかんで歩いていたらしい。
ごめん。
「もぉ、お前急にいなくなるからさ。俺あせったよ」
俺が言うと、雪乃がうなだれる。
「翔太くんごめんね、また迷惑かけちゃったね」
「いいよ。慣れっこだし」
俺はいつものように答える。雪乃のドジは今日に始まったことじゃないし。……、いや、今日ドジったのは、俺のほうだろうか。もっと気をつけておくべきだったのかもしれない。
と、雪乃が俺の肩越しに何かを見つけたように
「あ」
と言った。
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