幼なじみのアイツ

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 雪乃の視線の先だろう場所には、……何しろこいつの前髪長すぎて、目が髪の隙間からチラチラ見えるだけなんだ……レースがあしらわれたふわっとした甘めのデザインのハンカチ。 「へえ、可愛いじゃん」  俺が何気なく言うと、雪乃の肩がピクリと跳ね上がった。 「これ、欲しい」 「いいんじゃない」  雪乃はハンカチを取るといそいそとレジへ持っていく。  ああいう可愛いの、欲しがるところ、あったんだな。  俺はくすぐったいような気持ちになって、雪乃の後ろ姿を見た。  雪乃の母さんへのプレゼントも買って、俺たちは家に帰った。やれやれだぜ。  その日、休み時間に俺がトイレから教室に戻ってくると、雪乃が二、三人の女子に囲まれていた。雪乃は困ったようにうつむいている。消しゴムを取ったとか取らないとかでもめているらしかった。仕方なく間に入る。  「この子ったら、何も言わないんだもの。腹が立っちゃう」  ツインテールの女子が腕を組みながら、俺に向かって言った。クラスでも気が強い方で知られている山口だ。雪乃の手にピンクの消しゴムが握られていた。 「……、拾ったんだよ」  雪乃が、俺にしか聞こえないくらい小さな声で言う。 「山口、悪かったな。こいつ、拾ったんだってよ」     
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