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この家の肉じゃがは他と変わらず家庭的な味で私をほっとさせた。
ご飯を口に入れて初めて彼の言う通り自分は空腹だったと認識し、そうと分かったら皿が空になるまで黙々と箸を進め、食べつくす。
彼は空になっていたコップに新しくお茶を注いで私に差し出してくれた。
それを一口胃に流し込んでようやく色々と落ち着いてくる。
恐いからといってこのままじゃ駄目なのは明らかだ、とにかく話さないと。
「お茶とお夕飯ありがとうございました」
「あぁ、いいえ」
「それで」
「うん?」
「これからどうするんですか?」
「どうって」
質問の意味が理解できないのか、彼はこてりと首を傾げた。
帰りたいって言っても大丈夫かな。
散々強制的に振り回してあっさり帰してくれるわけないだろうし、やっぱり殴られて却下されるだろうか。
「電話そこにあるから家族なりタクシーなり呼べば?」
到底無理だと端から諦めていたことを彼はさらっと言う。
これまでぐるぐる悩んでいたのが馬鹿みたいだ。
「えっ」
「えって……別に泊まりたいならそれでもいいけど」
私は全力で顔を横に振った。
それを見てまた彼は笑い出す。
カラリとした無邪気な笑顔。
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