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化粧室を出て、外で待っていた拓真から未使用のハンカチを受け取った。
大人しくそれで顔を拭き、ふと脳裏をよぎったことを呟く。
「私、何か病気なのかな」
拓真は眉間に皺を寄せ、私に問うた。
「お前、前にも過呼吸になったことがあるのか?」
私は素直に首を縦に振る。
「これ、過呼吸っていうの?」
「あぁ。でも別に病気とかそんなんじゃない」
大抵は激しい運動をしたあとに発症する人はすると拓真は説明してくれた。
そっか、あの日はそれでなったんだ。
一人納得し、同時に今回はそうでもないことに疑問を抱いた。
ホームに、まもなく電車が到着するとのアナウンスが流れる。
「一先ず帰ろう。もう、くたくただろ」
拓真のいつもの笑顔。
見ているだけで気持ちが安らぐ、優しい笑顔。
「うん」
私も微笑みを作り、それに頷いた。
普通列車がホームに入り、車両のドアが開く。
二人手を繋いで電車に乗り込んだ。
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