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だけど、新橋は泣かなかった。
女特有の柔らかい肌に触れるたび、新橋は酷く辛そうに顔を歪めた。
彼女のような潔癖そうな人間にあの仕打ちは到底耐えられないものだと俺は知っている。
でも泣かない。
泣くかな、泣くかな、と徐々に待ち遠しい気持ちに駆られるも、最後まで彼女は俺の思う通りになってくれなかった。
それだけならまだしも、新橋は俺を心配していたと言う。
面識の無い者同士だからとはいえ、こんな屈折した人間に対して純真な感情を抱いた彼女がおかしかった。
新橋を見送ったあと、俺は久々に一晩中赤の他人のことで頭がいっぱいになった。
どうやれば彼女を泣かせることができるだろうか、そればかり考えていた。
今でもそれは同じだ。
新橋を真に屈服させるにはどうすればいいんだろう。
そう、思考をめぐらせるのが愉快で愉快でたまらない。
ともかく運は俺に味方した。
あの紺色のジャケットに、茶色のチェックのスカートは間違いなく俺が通う高校の制服だった。
時間はたっぷりとある。
生徒数が多いわけでもないし、地道に探せば容易く見つかるだろう。
あぁ、楽しみだ。
今度会ったら彼女はどんな顔をするだろう。
こんなに心躍ることは本当に久しぶりだ。
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