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「真琴、お前大丈夫か?」
「え、何が」
私はハッとして大慌てで時間を確認する。
朝の6時12分、いつもより約20分早い起床だ。
「いや、そうじゃなくて。叫び声、響いてたぞ」
「本当に?」
めったに見ない悪夢に寝惚けながら絶叫してしまったようだ。
叫んで当たり前の内容だったけど。
「本当に。昨日からお前変なんじゃないか?」
拓真はベッドの隣に来ると近くにあった勉強椅子に座り込み、腕を組んで首を傾げた。
拓真の視線の高さが下がり、私はちょっとだけ首が楽になる。
「はは、昨日ちょっとはめを外し過ぎたみたい」
動揺を悟られないよう、明るく声を繕う。
「ったく、カラオケとか慣れないことを平日にしにいくからだ。次からは無茶な誘いは断れよ」
拓真は咎めるように眉をひそませ、手の甲でぺしぺしと私の頬を叩いた。
それをうっとうしいと、おもむろに払いのけて訴える。
「うん、言われなくても分かってる」
ここまで聞いてやっと拓真は肩から力を抜いた。
「おう、じゃあ俺行くから」
「いってらっしゃーい」
平静を装って私は布団の中から小さく手を振った。
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