159人が本棚に入れています
本棚に追加
散々な一日に落ち込みながら、ホームに続く階段を下りようとしたときだった。
階段のちょうど中頃で人が一人、端に座り込んでいた。
腕も足もだらりと伸ばし、左側の壁に寄りかかるようにうな垂れている。
フードで頭が隠れていて、表情は伺えない。
肩幅はガッシリとしているから男の人であることは間違いなかった。
邪魔だなぁと思いながら一度は素通りしたものの、どうも気になってしまい、彼がギリギリ見える位置で電車を待っていた。
快速列車が到着しても身動き一つしない。
もしかして、具合でも悪いんじゃ……。
下車した人たちはそんな彼を、邪険な目をしながら避けるか、視界にすら入れないかの二つだった。
まもなく普通列車が到着するとのアナウンスが流れ、落ち着かない気持ちでいた私はその場から離れて階段に足をかけた。
彼の横に並び、そっと肩に手を置く。
「あの、大丈夫ですか?」
触れた肩から微妙な振動が伝わり、別に寝ていたわけではないのだと知る。
よく見れば衣服はよれていてスニーカーもボロボロになっていた。
元は白だったろう靴紐は黒く薄汚れている。
ゆるゆると彼が顔を上げ、私たちの目が合ったと同時に後ろから怒声が響いた。
最初のコメントを投稿しよう!