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主人不在の室内で私は自分のものと比べてやや固めのベッドに両足を抱えて座り込んでいた。
同じ姿勢で居続けたせいか脚、特に踵の裏がじんじんと痺れてきている。
それを和らげるためにすーっと脚を伸ばしたら、その間だけ布の擦れる音が静寂を打ち消した。
静寂、というのも誤りかもしれない。
この部屋に身を置いてからというもの、私しか聞くことの出来ないやかましい音がずっと鳴り響いていたから。
ドクンドクンと大きく強く心臓が跳ねる。
忙しく脈打つ鼓動はキィと扉が音を立てたとき、荒波のごとく激しくなった。
「……真琴」
ドアを開けて腕を伸ばしたままの格好で拓真は身を固まらせた。
さぞ驚いたのだろう、二つの目は大きく見開かれている。
それもそのはず、原田君と会った日から今日までの四日間、私はこの部屋どころか拓真に寄り付きもしなかったのだから。
告白すると、あの瞬間、私の目の前に恭介が立っていた。
背丈は大きく差があるし、よくよく思い出せば筋肉の付き方だって違う。
なのに、首や肩、肉体のパーツ一つ一つが男性の逞しさを含み、重なって見えたんだ。
拓真も一人の男の人。
恭介と同じ、異性。
拓真もあんな風に女の子をねじ伏せるの?
痛めつけるの?
掻き抱くの?
混乱した。
一度考えたらもう止まらなくなった。
それから私は衝動的な拒絶感に支配されていた。
翌日なんかそれは酷いもので、声がしただけで身を隠し、たまたま顔を合わせただけで脱兎のごとく逃げ出した。
拓真でそうなんだから言わずもがなお父さんに対しても同じ。
お母さんがいなかったらどうなっていたことか。
そのお母さんも挙動不審な私をだいぶ怪しむようになっていた。
目を合わせれば、いつもその瞳は怪訝な色に塗りつぶされている。
いつ口で問いただされるのかとヒヤヒヤしてばかりだった。
今日まで何も言及されなかったのは最早奇跡とも言える。
ギリギリだった。
精神も神経も張り詰めていて、窮屈だった。
生きてる心地がしなかった。
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