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自分が抱いた情欲に打ちのめされた夜、久々に夢を見た。
白いシーツの上で展開されるあの夢を。
目を閉ざし枕に横顔を擦り付け、現実から逃れようと必死になりながら、止まない苦痛とほとばしる熱を受けて存分に弄ばれるだけの光景。
朝が来ること以外に終わりはない、地獄のような時間。
けれど、このときの夢は少し違った。
ベッドが軋む音を耳に拾いつつ、痛みに悲鳴を上げるどころか私はむしろ悦んでいた。
忌々しい熱を生む大きな手を自らの手に絡ませて積極的に求めてすらいた。
散々私を苛めてきた痛みも姿はなく、あるのは細波のように押し寄せる陶酔感のみ。
ただただ幸せが胸に溢れて涙が零れ、それを拭いもせず幸福に浸っていると温かな手が私の目尻をさすった。
あっ……。
心が跳ねる。
私は手の持ち主を一目見ようと目蓋を開けた。
ぎゅっとキツく瞑っていたせいか、視界は白にぼやけて上手く定まってくれない。
「呼んで」
嬌声の狭間に短くねだる。
その優しさに満ちた声で私を呼んで。
私を安心させて、お願い。
揺れて乱れてまともな声とならなかったのに、愛おしい人の唇はハッキリと私の名を紡いだ。
「真琴」
瞬間、視界はもとより意識までもが真白に染まった。
意識が薄らいでいく中、それでも確かに見たのは全てを包み込むような微笑み。
恍惚に身を任せる私を見下ろす双子の片割れの顔。
紛うことなき夢だった。
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