159人が本棚に入れています
本棚に追加
/477ページ
暗く落ち着いたダークブラウンの髪色は、日の光に当てられるとより暗く濃くなり、ただの黒にしか見えなかった。
髪の長さも少し短くなっている。
「どうしたの?」
「別に、前の色に飽きただけ」
含み笑いに疑心が抜けないけれど、飽きっぽさを盾にされたら納得するしかない。
「なんだよ」
それでも頭髪から目を逸らせないでいたら、恭介に頭をクシャクシャ乱される。
それを振り払うポーズをして止めさせ、乱れた髪を整えた。
一応はこれから放課後デートをすることになっているし。
「別に。……カッコイイなって」
「はは、スゲー今更」
「……すみません」
「冗談だよ、冗談」
そろそろ行こう、と恭介が私の手首をつかみ、歩き出す。
私は隙を見て、一度大きな手から自分のそれを引き抜き、空になった掌を握り直した。
「真琴」
通学路を闊歩して短い横断歩道の前で信号待ちをしているときに、グイと恭介に引き寄せられる。私と恭介の肩が並んだ。
「なに?」
「真琴はいつも可愛いよ」
「…………」
なんて答えたらいいのか分からず黙っていたら、また頭をクシャクシャにされた。
最初のコメントを投稿しよう!