第14話:涙は破け、夢剥がれゆく

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中島から得た情報によれば新橋妹と樋口の交際は五月の上旬から、つまり兄妹で神社へ遊びにいった日よりも前からだ。 拓真たちが双子であることを知らなかった樋口は何の巡り合わせか二人が一緒にいるところを目撃して、新橋妹に浮気されたと誤解したんだ。 妹が過換気発作を起こしたのがその時なら、拓真は当然妹を助けたい一心で献身的な行動をとったのだろう。 拓真が甲斐甲斐しく妹へ尽くす様は二人が親密な間柄なのだと見る人々に思わせるには十分な程だ。 「前話したときに、見ず知らずの人に袋貰って助かったって話したよな。ほんと、さっきまで忘れてたんだけど。それ、あの人だった」 “まぁ、言われなくても最初からちゃんとしてるし、考えてるけどな”。 樋口は尻尾を巻いて逃げ出してもいいような場面に、堂々とやってきた。 俺たちの話を全て聞き、示した条件を呑むことも約束し、金も渋ることなく用意してきた。 どう見てもちゃらんぽらんなチンピラにしか見えないヤツがどうして? 樋口は俺たちが思っていたよりも真剣に妹を慕っていた、惚れ込んでいた。 自然と思考回路は狭まり、一つの仮説が生まれる。     
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