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だらしない格好といい先ほどの暴力といい、彼が良識を持っているとは到底考えられない。
このまま改札を突っ切るだろうと思っていたら、彼は改札機ではなく窓口の方に足を進め、ポケットから一万円札を取り出し駅員に向かって放り投げた。
「ちょ、ちょっと!」
去り際に驚いた駅員の呼び止めようとする声が聞こえた。
でも、当然彼はそんなこと、気にも留めずに走り続ける。
ごめんなさい、と軽く駅員に向かって会釈した折に、さっきのガラの悪い輩が追いかけてくるのが視界の端に映った。
思わず、きゃっと小さく悲鳴をあげてしまう。
それにつられて彼は後ろを振り返るとますますスピードを上げ、今度は出口に向かって階段を駆け下りる。
二段飛ばしで下りるもんだから、転ばないように足を動かすのが精一杯で、どこを目指して逃げているのかなんて考える余裕は無かった。
そのままの勢いで人ごみを走りぬけ、私たちは夜の街へと飛び出した。
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