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コップを空にし、知らない男の家に連れ込まれたという現実がまた私を苦しめ始めたとき、今度は目の前にほかほかのご飯と肉じゃがが現れた。
私は呆気にとられて彼と食卓とを交互に見る。
「なんちゅう顔してんだよ」
そう彼は笑って支度を終えると、私の向いに座りさっそく食べ始めた。
「食わないの? 冷めちゃうぞ」
「いや……あの」
「なに?」
「夕飯まで食べさせてもらう義理ないし」
こんなことしてもらうくらいなら、さっさと帰してほしいというのは恐怖に喉が詰まって言えなかった。
「あんなに走ったから腹減ってるっしょ、我慢は良くねーよ我慢は。あと、これは巻き込んで悪かったって詫びだから」
あんな不良行為やらかしちゃう人でも罪悪感ってあるんだ……。
ちょっとだけ感心。
気がつくと彼は箸を置いてじっと私を見ていた。
私が食べ始めるまでその視線は止まないんだろうと察し、おずおずと箸を手に取る。
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