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第6話:ちぎれた鎖、庭の中
「私、恭介のこと好きじゃないんだ」
脱力した真琴の声が静々と室内に溶け込んでいった。
気だるげに立ち尽くす真琴がとても艶を帯びて見えたのを覚えている。
肩に流れた黒髪から噛まれた痕がうっすらと残っているのが垣間見え、あのときの真琴の表情を思い出してぞくりと体が熱くなった。
飲んだくれ共に迫られて、切実に俺に助けを請う様は本当によかった。
俺は真琴が唯一縋ることが出きる相手なのだと思うとたまらなく満たされた。
真琴は俺を好きではないと言ったけど、別にそれでも構わなかった。
真琴が俺を嫌っていようが関係ない。
傍で真琴を見ていられたらそれで良い。
真琴を取り巻く赤の他人の内、一番彼女を知っている存在になれたら、それで。
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