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第7話:あなたの妹で良かった
張り詰めた空気が漂っていた。
秒針の時を刻む音だけが鼓膜を刺激する。
流し台の扉にもたれ座り込み、ただただ時が過ぎるのを待つ。
自身の左側からカチャリとドアノブが回る気配がし、ゆっくりと顔を上げた。
居間から姿を現した彼女を見上げる。
彼女は、神妙な面持ちをしていた。
おずおずと乾ききった口を開く。
「どう、だった?」
逸る気持ちを抑えきれず食い入るように目を見つめる。
彼女はためらいがちに事を説明し始めた。
「えっと、警察に行く気はないっていうのと、両親には絶対に言わないでほしいって。……これ以上誰にも知られたくないみたい」
そこまで言って口ごもり始めた彼女に、すかさず原田が問いただした。
「病院は?」
「その、最中のことは全然覚えてないって。だから先輩が避妊してくれたかどうかは……」
消え入るような声で告げると、彼女は完全に黙りこんでしまった。
組んでいた手にぐっと力が入り、決して伸びてはいない爪が甲の皮膚に深く食い込む。
「どうする。病院は行ったほうがいいと思うけど」
隣室にいる真琴に聞かれないように、俺の耳元で原田は助言した。
「あぁ……」
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