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第2話:めぐり、めぐる
イライラしていた。
新橋に手を出したのは、単にそのイラつきを誰でもいいからぶつけたかっただけだ。
彼女は本来俺の好みじゃない。
もっと甘ったるくて、いかにもな女が好きだ。
新橋はというと、これといって可愛いわけじゃない。
重苦しい黒髪は耳の少し下のところで切り揃えられていて、ぱっと見ガキっぽいうえ、制服なんか、全てのボタンをきっちりと留めてスカートも膝の辺りまで伸ばした、よくある野暮ったい着こなしをしていた。
当然、化粧気なんかありゃしない。
もの凄く地味な女。
だが、この感情の捌け口に彼女はちょうどよかった。
俺が何をするにも一々反応して震え上がる、泣くことしかできない弱い存在。
こういう奴をからかって、遊んで、壊して、ストレスを解消するのは俺の悪い癖だ。
危害を加えないと油断させてから、ほのかな信頼を裏切る。
そうした時の新橋の表情を想像したらわくわくした。
実際は思っていたのと少し、いやだいぶ違ったけれど。
俺が力任せに組み引くまで、小動物みたいにビクビク震えるくせに自分の主張は一丁前にしようとした。
まずそこにムカついた。
こういう時はぐちゃぐちゃに泣かせて憂さ晴らしをするに限る。
人が自分を恐れて泣き叫ぶ姿を見るのは楽しかった。
一過性でも優越感と征服欲が満たされるのは気持ち良い。
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