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私は目を開けた。
そこには、グレーのスーツにネクタイという、サラリーマン風の男が立っていた。全てがねじくれた世界で、その男だけがねじくれていなかった。
私が不思議な思いで眺めていると、男は言った。
「バグだね」
そして頭をかきながら付け加えた、
「いやー、設計者としてお恥ずかしいかぎり」
設計者? 何のことだ。
「でもね、前触れがあったはずなんだけどね……。普通はそこで、私に助けを求めるんだけど」
男は私に手をかざすと、その手をひら、ひら、と左右に振った。
周りの世界が、崩れ始めた。狂った図形たちが、パラパラと剥がれるように崩壊していく――。
――いや、ちがう。元に戻り始めたのだ。世界は元型を取り戻しつつあった。
「じゃあ、どうもね」
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