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一番甘い、頭を駄目にする匂いは、貴美鷹の首筋から匂ってくる。
―――ヤりたい、ヤりたい、ヤりたいヤりたい。
「い、やだ、」
めちゃくちゃに振り回した貴美鷹の手が静稀の目元をかすった。
「いっ、」
長く伸ばした前髪の下から、青痣が露出した。
目に見えて怯んだ貴美鷹を捕らえ、引きずり倒し、床に押し付け、逃げ場を奪った。
「安心しろよ、お前のせいじゃない」
全部。全部。全部。
悪いのはお前じゃない。
不幸な偶然が重なっただけだ。
悪いのは誰でもない。
意図した不幸な偶然がただそこにあっただけ。
脳みそまで浸透する甘い匂い。
露になった首筋に食らい付く。
甘い、ような気がした。
唾液が溢れて止まらない。
さじ加減を間違えた歯が、貴美鷹を傷つける。
―――惚れたのが悪い。
こんなにも欲情している。
怯えた表情がたまらなく愛おしいような、或いは憎らしいような。
それすらわからなくなる。
左手で白い肌をまさぐる。
荒く息をする度上下する胸の頂点に、小さな尖りがある。
指が掠めたとき、貴美鷹の肌が細かくおぞけ立った。
指先でくるりとなぞり、口を開いて含んだ。
「や、だ」
力ない抗議の声に顔をあげたとき、静稀は望んでいたものを目にした。
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