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 ビリヤード台の上に薄い体が這っている。  うつ伏し、グレイのラグランをたくし上げた細腰がくねり、指先が足掻いてラシャに爪を立てる。  視界が霞んで、熱ぼったい息が食い縛った歯列の隙間から漏れる。  眩暈がする。  神田は入江の項に鼻先を沈め、甘い匂いを嗅ぐ。  鼻腔に広がり、脳天を突き抜け、赤い色で染み渡る。
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