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「……と言うわけでこの症状は突発的に表れて今のところフェロモンが減少する老年期に自然治癒する以外の治癒方法が確立されていない訳だが……」
体育教師が深緑の黒板に白チョークを走らせるとパラパラと砕けた破片が床へ散った。
「まあ、自分が好きな人に欲情したり、自分を好きな人に欲情されたりする程度が盛んになるって言う、アレルギーみたいなものだな」
こちらを振り返りながら笑う片田の背後に書かれた文字は症状の症が病垂ではなく雁垂だったり不必要な一画があったり、逆に少なかったりと明らかな誤字が目立った。
―――僕はあなたのアレルギーになりそうです。
正しい漢字で保健の内容をノートに書き留める。
周りで誰かの話す声が聞こえる。
フェロ症とか、ヤリ放題じゃんとか、F組の○○が童貞切ったとか。
隣の家のおばちゃんがフェロ症で男喰い放題だとか。
くだらない思春期のくだらない好奇心のくだらない噂話になってる。
必要性皆無としか思えない知識を詰め込んで何になるのか。
思春期の僕らは、まだ性的に発展途中で、誰かが童貞切ったとか学年1の美女が隣のクラスの先生となんて話が大好きで。
学年に3人の割合でいるはずのフェロ症もそんな都市伝説じみた噂のひとつになってる。
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